COLUMN

創造性だけじゃない!
子どもの対話力&考える力を伸ばす、注目の「アート教育」

2023.06.01

アート教育

先行きが不透明で将来が予測困難な時代、文系・理系にとらわれず、教科を横断的に学ぶことで問題発見・解決力や創造力を身につける、STEAM教育*が注目されています。

なかでも図画工作や美術を含むアート教育は、ものをつくる創造性だけでなく、子どもの対話力や自己肯定感などの「生きる力(非認知能力)」を育むものとして期待されています。そこで、今回はアート鑑賞やデジタル絵画など、身近にできるアート教育の魅力についてご紹介します。

★Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)を横断的に学ぶ教育手法。Artsは、芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広範囲で定義される。

VUCA時代*こそ大切に育みたい、
子どもの主体性と対話力

インターネットで欲しい情報がすぐ手に入り、AIがおすすめのモノやサービスを教えてくれるまでになり、便利である一方、それらの情報に判断を惑わされることも増えています。

そんななかで、近ごろ注目されるのが「アート思考」と呼ばれる思考法。既成概念にとらわれずに、自分の興味をもとに、自分なりの見方で世界をとらえ、物事を探求していくことで、新たな問いや発想が生み出せるというものです。複雑化する時代を自分らしく生き抜くためには、主体的なものの考え方や判断力を子どものうちから養うことが大事とされています。

小中学校の図画工作や美術の授業も、かつて親世代が体験したような、上手に絵を描くことや名画の歴史を正しく理解するといった技能・知識重視の授業から、子どもの主体的な思考力や対話力を育むものに変わってきています。

その一つが「対話型アート鑑賞」と呼ばれる授業です。これは先生がファシリテーターとなって、子どもたちが自分やほかの人がつくったものに対して感じたことを自由に話し合うことで、作品に対する理解や発見を深めていくというもの。あえて作品名を伝えず、作品から得たインスピレーションからタイトルを考えさせるといった、想像力を掻き立てる授業もあるそうです。

★Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、
Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字をつなぎ合わせた造語。目まぐるしく変化し、将来の予測が困難な状況を表します。

子どもの「なぜ?」を引き出す、
対話型アート鑑賞のすすめ

「対話型アート鑑賞」は、子どものどんな能力を伸ばすのでしょうか。

①観察力 

まず大事なのは、作品にまつわる情報にあえて触れず、先入観なく作品と向き合うことです。そうすることで、子どもの潜在的な観察力や好奇心を引き出すことができます。

②論理的思考力・表現力

次に、物事に疑問を持つ考える力と、考えたことを表現する力です。子どもが作品を見て感じとったイメージに対して、親や先生が「これ何だと思う?」「なぜそう思う?」などと投げかけます。すると子どもは自分の考えや気持ちを人にどう伝えようか、アウトプットの方法を考えます。このプロセスを通して、自然と論理的思考力が育まれるのです。

③自己肯定感

対話を重ねるなかで、子どもは「私はこう思う」という自分の気持ちにあらためて気づきます。そうして自分の考えや気持ちを自由に表現したことを大人が同じ目線で受け止め、前向きに返すことで、子どもには自己肯定感が芽生えます。

アートの見方や感じ方は十人十色で、正解がないのが面白いところ。親子間でそれぞれに感じたことを交わすだけでも、子どもは多様な感じ方があることを発見できるのです。

デジタルを上手に活用して、
おうちアートを楽しもう

子どもがアート体験できる場として、美術館や博物館が行っている創作や美術鑑賞のワークショップなどがあります。しかしお子さまが就学前あるいは遠方にお住まいの保護者の方にとって、これらに参加するのは少々ハードルが高いもの。そこでおすすめしたいのが、デジタルツールを使ったアート鑑賞や絵画づくりです。

デジタル活用①:
世界のアートにふれる

どんな作品が子どものアート鑑賞に向いているかわからないという方も、まずは感覚的にアートに興味を持つきっかけとして、オンライン美術館を訪ねてみるのはいかがでしょう。世界各国の美術作品を紹介するGoogle Arts & Cultureでは、絵画のなかに隠れた動物などのモチーフを探すゲームなど、子どもの好奇心をくすぐる仕掛けがたくさん。また国内外の名だたる美術館が提供するバーチャルツアーは、美術作品だけでなく、美術館特有の空間も一緒に体感することができ、子どもの想像力を刺激してくれるはずです。

デジタル活用②:
デジタル絵画で自由に表現

美術鑑賞とあわせて、おうちで簡単に取り入れられるのが、タブレットやスマートフォンを使って絵を描くデジタル絵画です。さまざまな描画ツールを使って繰り返し描いたり、消したりできるのがデジタルの魅力。自分でツールを選んで想像したものをかたちにしていくことを通して、子どもの判断力が自然と養われ、表現の幅も広がるでしょう。

常識にとらわれずに自由に考えや感情をめぐらし、それを言葉やかたちにして表現するという習慣は、アートだけでなくほかの教科やあらゆる問題解決にも応用できるものです。親子で過ごす時間を活用して、身近なアート教育を始めてみませんか。

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